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ためいき 

漆は面白い素材だが 厄介な素材でもある。
漆芸に関係する諸材料も諸道具類もそれに似たようなところがある。
融通が利かないというか 頑固なシロモノだと思う。

粘度がある漆を塗る刷毛は コシが有る人の毛髪で出来ている。
特に東洋人の若い女性の毛、黒髪で作るのが良いとされている。
茶パツはとんでもない事で ヘアダイは勿論 パーマなど今風の毛髪はNGである。
自然な 癖っ毛も いただけない。

健康でナチュラルな 真っ直ぐな長い黒髪を どこで調達するのか知らないが
女性の髪の毛を藁灰汁で洗浄し、選り分けした後、良質の毛を糊にて固めて乾燥し、
檜の薄板で挟み込んで作る。

漆を塗り 毛足が消耗すると檜板を塗師刀(これも特殊な刃物)で 
鉛筆を削るような要領で 鉛筆の芯に当たる毛髪を出し 調整し使うのだ。 
この刷毛を作る職人さんは 現在とても少ない。
書道の筆、絵筆は良い物になると 高価である。
材料の毛が入手困難になればなるほど 価格に反映される。
この漆刷毛も 同じ事で 価格は安くはない。
「名人」と称される人が作ったものは 推して知るべし、高価である。

漆芸には 色々の刷毛が必要である。
塗り刷毛だけでも 下塗り用 中塗り用 上塗り用が必要で 漆絵や蒔絵等
加飾用の筆も 必要になる。
塗り刷毛に関しては 塗る物の大きさによって 刷毛の大きさも変わってくるので
本格的に漆芸をするなら 刷毛の本数もそれなりに揃えなければいけない。

最近 漆刷毛を買った。
ネットのHPを見て「お買い得」という品物を買ったのだ。
相手は よく知られた漆刷毛の工房なので 良い物が「お買い得」なら
こちらとしては 嬉しい限りである。
「お買い得」とは 真っ当な商品に一寸した瑕疵があるというもので
今で言う「アウトレット商品」であるという説明文があった。
丁度 小物を作り出したこともあり その三本セットの刷毛の大きさも丁度良い。
グッドタイミング、ワクワクして注文した。 
新しい刷毛が届くのを待って 先生に見て頂いた。

「?」「!」であった。
鉛筆の芯に当たる毛髪が 糊で固めていないのである。
糊付けは 毛髪をまとめる為と 
毛細管現象で漆が毛髪部分に浸透しないようにする為に
必須な工程であるのだが その工程を踏まえていないのだ。
この刷毛は 真っ当な伝統的な工法で作られた漆刷毛ではなかったのだ。
にも関わらず「大極上」「上等」の焼印が 仰々しく押されているではないか。
ちょこっと塗る分には「使える」刷毛ではあるが 
削りだし調整し 長く「漆刷毛」として 使える物ではなかったのだ。
「大極上」「上等」とは どういう意味なのか、
焼印を押す感覚が理解できないのである。

難癖をつけるような気がして クレーム的な事を言うこと 気は進まなかったが
今後のこともあり 電話をしたが 後味は悪い。
正直 納得いく話し合いではなかったが 品物は返品し 代替の刷毛を送って貰うことにした。
あのような中途半端な刷毛を「お買い得品」と称すること 理解できない。
それ以前に「漆刷毛」と称して 売る事 首を傾げる。
職人として 仕事人として プロとしての矜持 お持ちなのか。

きちんとした仕事に対して 対価を払うのは当たり前
高いなぁと思っても 納得いくものなら 買う側は対価を払い
大事にメンテナンスしつつ 使い続けるのである。

漆刷毛は 特殊な刷毛であるとは思う。
「刷毛」というカテゴリーの中でも マイナーに違いない。
使う人間の数とて 知れたもの、
漆芸自体 絶滅危惧工芸に近い物だし その刷毛を作ること
大変なご苦労であろうとは察しはするが 
物の作り手としてのプライドは持つべきではないのか。

もし 今回 この刷毛を買って 何もこちらが言わなかったら
江戸から続く 漆刷毛の「工房」の品物として
この刷毛は「漆刷毛」として「大極上」「上等」の旗印を引っさげて まかり通るのである。


それって 恥ずかしくないのでしょうか?



 


 

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category: 未分類

Posted on 2012/07/09 Mon. 11:18  edit  |  tb: 1   cm: 6  

コメント

はじめまして 漆うるわし日々のコメント蘭 から見に来させていただきました。ストレートな文章に共感させていただきました。また読ませていただきます。ご存知であれば失礼なことですが、田中刷毛が良いのではないでしょうか。

こにし #- | URL
2012/07/22 03:49 * edit *

こにし様
初コメ ありがとうございました。
田中刷毛、名前は存じ上げておりますが まだ使った事ありません。
今度 ぜひ 使用してみようと思っています。
ネット通販で 私が「!」と思った刷毛 
漆芸の仲間内では 噂に上がっていたそうです。


imari #- | URL
2012/07/23 23:18 * edit *

漆刷毛を低価格で提供することに難があるように思われます。本通しのものを何等分かにして柄を付けて、数本に分けるようにすると良いと思います。手軽にと言うことでほぐした状態で販売されているのでしょうが、漆を塗るのは中々手軽にできる行為ではないと思います。比較的手軽なのは拭き漆ですが拭き漆も本気でするとかなり気を使うものですし、漆器を作るのに気軽という言葉は合わないのではと思います。使うのは気軽に使いたいですが。

こにし #- | URL
2012/07/24 15:02 * edit *

オオ、見落としてました^^;;

昨今のナンチャッテ使い捨て商品なら兎も角
この手の伝統工芸絡みの商品に誇大広告?
ってのは理解出来ませんね(怒)

経営者が代替わりしたのかも^^;;

woo #amX3l5jU | URL
2012/08/01 12:35 * edit *

はじめまして。私は22歳の大学院生です。専攻は、漆とは全く関係ありませんが、日本文化としての漆に大変興味を持っています。
最近漆文化支える道具のひとつである「漆刷毛」が危機だと知り、情報を集めていたところです。その状況を知り、実は私自身、しっかりとした伝統を引き継ぐ刷毛職人になりたいと強く思うようになっています。
現在刷毛を作っているのは日本で二人だと聞きました。一方とは連絡がとれ、後継者の育成をおこなっているのかどうか、私がこの道にはいることができるか、お聞きしたところ、様々な事情により当工房では難しいというお返事をいただきました。そこで、今度はもう一方の方に連絡をとろうと思って今連絡先を探しているところです。
これからも日本の心を継ぐものとして、漆器職人さんには良いものを作っていただきたい、そのために、力を存分に発揮できる良い道具も同時に守っていきたいものです。このサイトを見て、さらに想いを熱くした次第です。ありがとうございました。

うちうみ #WLI.Idac | URL
2013/06/17 09:06 * edit *

嬉しいです

<うちうみさま

心強いメッセージ ありがとうございます。
連絡先でしたら お役に立てるかもしれませんので
遠慮せず 仰ってくださいませ。

身近でも 漆掻き職人さんになった先輩もいます。
漆芸の未来は 色々難しい所もありますが
守っていこうとする方々もいらっしゃいます。
日本の漆産業 育てたいですね。

imari #- | URL
2013/06/18 22:24 * edit *

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まとめ【ためいき】

漆は面白い素材だが 厄介な素材でもある。漆芸に関係する諸材料も諸道具類もそれに似たようなところがあ

まっとめBLOG速報 | 2012/10/23 09:48